コラム
治すことばかり考えていた僕に、鍼灸師の先生が教えてくれたこと

mamacureを開業して3年がたちました。紆余曲折しながら続けてきましたが改めて「自分はこのお店で何をしたいのだろう」と、mamacureと向き合おうと悶々としながら過ごしていました。
そんなとき、開業した頃におすすめしてもらいながら、ずっと行けていなかった鍼灸師の中根一先生の施術を受けに京都を訪ねました。行きの電車では中根先生の本を1冊読みながら向かいました。僕はもともと東洋医学に抵抗があったわけではありません。新卒の頃から、ある鍼灸師の先生に仕事への向き合い方や人としてのあり方、生き方のようなものを背中で教えてもらっていました。東洋医学の「養生」という考え方もとても大切なものだと思っていました。
ただ自然の流れに沿って身体を見るとか、季節と身体の関係とか、東洋医学で語られる世界は分かるようで分からない。
理学療法士として、西洋医学や科学的根拠を中心に学んできた僕には治すこと、そして体の原因を一つの答えや正解、正しさを軸に置いていたので、東洋医学の考え方はどこか捉えどころがなくて、正直、少しスピリチュアルなもののように感じていた部分もありました。興味はある。なんとなく大切そうだとも思う。
でもそれ以上深く調べることはせず、表面的なところで止まっていました。
そんな中で経絡治療を軸に行っている中根先生の施術を受けました。
正直、かなり緊張していて何を話したのかほとんど覚えていません。
ただ一つだけ、今でもはっきり覚えていることがあります。
施術の最後に中根先生が、「『医療』『治療』という言葉の意味を一つずつ調べてみるといいよ」と教えてくれました。
医療、治療とは何だろう
僕は理学療法士として働き整体院を始めてからずっとこの問いに悩んでいました。
- 痛みを変えること。
- 身体を良くすること。
- 正しい動きを伝えること。
お金をいただく以上目に見える変化を出さなければならない。
自費のサービスなのだから、保険診療と同じことをやっていたらダメなんじゃないか。
病院ではできない、もっと特別なことをしなければいけないんじゃないか。
そんなふうに考えていました。
今思えば、自費だからこそ、何か崇高なことをしなければいけないと思っていたのかもしれません。
帰りの新幹線で何かにすがる思いで携帯を開き「医」「療」「治」という漢字の意味を調べました。
医 いやす、くすし
いやす。病気をなおす。くすし。医者。病気をなおす人。
療 いやす
いやす。なおす。病気を治す。苦痛を取り除く。
治 おさまる、おさめる、なおす、なおる
おさめる。おさまる。ととのえる。しずめる。なおす。なおる。病気や怪我をなおす。
引用:漢字オンライン
意味を調べたとき、「あっ」となりました。
「医」にも「療」にも「いやす」という意味がある。僕はずっと治すことばかり考えていたんじゃないかと思いました。
病院や医療の現場では病気を治すことや機能を改善することが求められます。もちろん、それは医療の大切な役割です。僕自身も整形外科で働きその中で本当にたくさんのことを学びました。だから、病院がダメだとか西洋医学では足りないとかそういう話ではありません。ただ、役割が違うのかもしれない。そう思いました。
病院や社会制度だからこそできることがある。
反対に自費だからできること個人だからできることもある。
制度の中だけではどうしても手を差し伸べきれないところがある。
そこに「いやし」を届けることも自分の役割なのかもしれないと思いました。
自分の正しさを渡す前に
僕はこれまで、
- 「この人には運動が必要だ」
- 「この動き方を変えたほうがいい」
- 「ここを改善したほうがいい」
と、専門家として正しいと思うものを一生懸命届けようとしてきました。
もちろん、それが必要なときもあります。
でも、自分が正しいと思っていることとその人が今求めているものは必ずしも同じではありません。
身体を変えたい人もいる。
自分で運動できるようになりたい人もいる。
一方で今日はただ身体を預けたい人もいる。
何かを頑張るのではなく一度力を抜きたい人もいる。
もしかすると僕は、「良くしてあげなければ」という気持ちが強くなりすぎて相手が今何を求めているのかを受け取る前に自分の答えを渡そうとしていたのかもしれません。
だから今は自分が正しいと思う施術を押しつけるのではなく、まずその人が今何を求めているのかを受け取る。そのうえで専門家として身体を見ながらその人にとって意味のある時間を一緒につくる。そんな関わり方を大切にしたいと思っています。
ただ言われたことを何でもするということでもありません。
必要なときには、僕の見立ても伝える。
病院で診てもらったほうがいいと思えばそれも伝える。
今は休んだほうがいいと思えば、休む。
動けるときが来たら一緒に動く。
その人が受け取れるタイミングを待つことも一つの関わり方なのだと思うようになりました。
東洋医学をもっと深く知ってみたい
中根先生は「経絡治療」というものを一つの体系として臨床に落とし込み、長年届けてきた先生です。先生と出会って自分がこれまで知っていた東洋医学は本当に表面的な部分に過ぎなかったのだと感じました。なんとなく自然を大切にするもの。なんとなく養生が大切。そんな理解で止まっていたものの奥にもっと深い身体の見方や人の捉え方があるのかもしれない。そう思いました。
面白いことに東洋医学に触れたからといって西洋医学や理学療法から離れたいとは思いませんでした。
西洋医学も。理学療法も。リハビリテーションも。
自分はまだまだ表面的にしか理解できていない部分があるんじゃないか。
もっと深く学びたい。
もっと根っこの部分を知りたい。
そう思うようになりました。
これまで学んできたものを捨てて、新しいものに乗り換えるのではありません。
今まで培ってきた西洋医学、理学療法、リハビリテーションの考え方をもっと深めながら、今の自分にはない東洋医学という新しい視点を取り入れてみたい。
その先に身体のことで困っている人へ届けられるものがもう少し増えるかもしれない。
そんな気持ちから中根先生のもとで東洋医学を学ぶことを決めました。
mamacureで「いやす」ということ
現代社会はずっと何かに追われているような気がします。
- 仕事。
- 家事。
- 育児。
- 人間関係。
スマートフォンを開けば次から次へと情報が入ってくる。身体がつらくても自分のことは後回しになってしまう。そんな張りつめた日常とまた向き合っていくために一度身体を預けられる場所があってもいい。何かを頑張るのではなく休める時間があってもいい。
そして必要になったときには自分の身体を知り、もう一度動き始められる場所であってもいい。
僕はmamacureでそんな「いやし」を追求してみたいと思っています。
- 痛みを変えることも。
- 身体を動かせるようにすることも。
- 自分の身体について知ることも。
- 安心して身体を預けられる環境をつくることも。
どれか一つが正解なのではなく、その人がこれからの日常と向き合っていくための手段だと思っています。
mamacureの中だけで人生が完結するわけではありません。
その人にはその人の生活があります。家に帰れば家族がいて、仕事があって、大切にしたいことがある。だから僕が見たいのはmamacureの中で身体がどう変わったかだけではありません。
その人がmamacureの扉を出て、明日からの日常と向き合っていくために、今何が必要なのか。
それを一緒に考えられる場所。笑顔と健康を守れる場所。 mamacureをそんな場所にしていきたいと思っています。
▽鍼灸Meridian烏丸▽ https://www.ac-meridian-karasuma.com/